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心理学

スリルは控えめに

 新型コロナウイルス流行が峠を越え、経済活動を回復させるべく、政府が都道府県をまたいでの移動を認める方針を発表しました。今週末は、京都の観光地にも多くの旅行者が訪れています。社会が平常に戻りつつあることには、少しほっとします。

 ただ海外では、コロナウイルスが落ち着いてきた時期に、これまでの「コロナ自粛」のうっ憤を晴らそうとするかのように、旅行に繰り出し多くの買い物をする人が急増していて、その行動を「リベンジ消費」と呼ぶのだそうです。気持ちはわかりますが、わが国ではまだまだ全国で毎日新規感染者が出ていますし、もうしばらく第二波への警戒は必要でしょう。

 おそらく、まだ慎重さが求められていることなど、みんな十二分にわかっているはずです。そのような中で、やはり警戒を緩めずに過ごそうとするタイプの人と、思い切って出かけようとするタイプの人がいるのでしょう。後者の場合、よほど自粛のストレスが大きかったのかもしれませんが、まさに危険だからこそ行動したくなる人もいるようです。話は全然違うのですが、連日スキャンダルが報道されている官僚や有名人も、ばれたらとんでもないことになるとわかりつつインモラルな行動をしている点で、危険を冒すことが好きな人なのかもしれません。

 心理学では、スリルを好む人を「フィロバット」、安定にしがみつこうとする人を「オクノフィル」と呼びます(M・バリント『スリルと退行』1959年)。フィロバットは、いつも危なっかしい選択をするので見ていてはらはらしますし、ひと所で満足せず、つねに新しいことにチャレンジします。周囲の人に迷惑をかけることも少なくはありませんが、案外人が寄ってくるところを見ると、人間的魅力もあるのでしょう。私たちの心にはいつも、新奇なものへの憧れがあるのかもしれません。

 フィロバットの皆さんにとっては、コロナ禍での自粛生活は地獄でしょう。ただ、皆さんの魅力は世が安定をしっかりと取り戻すまで、もうしばらく温存しておいてください。アフターコロナでは、フィロバットの発想と行動力が存分に生かされるでしょうから。